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着色された加工肉は本当に避けるべきか

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肉の加工製品を美味しそうに見せる添加物の正体は亜硝酸塩

ハムやコンビーフ、ソーセージは、長期間保存ができるように、そして腐敗を防ぐための保存処理が施されています。

昔ながら保存処理といえば、燻製、乾燥、塩漬けでしたが、冷蔵保存と機械による商品包装が開発され、燻製などわざわざ強い味付けをする必要がなくなり、科学的な保存処理の研究されていきます。


どの保存方法も塩を使うことが多いわけですが、純粋な塩(塩化ナトリウム)で処理していた肉は、見た目で美味しくなさそうな茶色っぽい灰色になってしまいます。しかし、今から100年ほど前、塩化ナトリウムと一緒に硝酸カリウムを加えることで、肉がきれいなバラ色に変わり、見た目も美味しそうに演出できることが発見されました。

どうして硝酸カリウムが肉を美味しそうに見せるのかですが、硝酸カリウムが肉の表面にいる微生物によって亜硝酸カリウムに還元されます。この亜硝酸カリウムが肉の表面を赤く見せてくれます。


それは食品業界では活気的な発明だとして、それからは塩と一緒に亜硝酸カリウムまたは亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩を肉に加えており、硝酸カリウムはほとんど使用されていません。亜硝酸塩は肉に刺激的な風味と食欲をそそる色合いを与えますが、この効果は亜硝酸塩が肉の表面にあるミオグロビンと反応して一酸化窒素ミオグロビンを形成することから生まれます。


また、亜硝酸塩には、酸敗と異臭の発生を抑えるのは働きもあります。


しかし、亜硝酸塩の働きの中で何よりも重要なのは、黄色のブドウ球菌や、ボツリヌス中毒を引き起こすボツリヌス菌といった病原菌の繁殖を抑制することです。

亜硝酸塩は身体にとって害なのか=結局トレードオフ

まさにバラ色の未来を約束してくれるかと思われた亜硝酸塩ですが、一つ問題がありました。

亜硝酸塩はボツリヌス菌を死滅させるだけでなく、大量に摂取されればヒトを死滅させる威力もあるのです。致死量は体重1Kgあたり亜硝酸塩20mgです。大人男性の体重を70kgとして、致死量は1400mg。亜硝酸塩をいちどに1g以上摂ることはないと思いますが。


それに、保存処理中に添加された亜硝酸塩は、炒める・茹でるなどの加熱調理をすればほとんど分解されますので、ご心配なく。


アメリカ農務省(USDA)の規定によれば、加熱済みでも生でも、加工肉製品の残留亜硝酸塩の上限は700ppmです。上限値でも計算してみると致死量に達するのは、体重68kgの人なら約20Kgの肉製品を一気に食べた場合。ものすごいソーセージを食べることになります。


厄介なことがもう一つ。


保存加工肉を加熱すると亜硝酸塩は、肉のタンパク質を構成するアミノ酸中のアミンと反応して、ニトロソアミンという化合物群を形成します。ニトロソアミンの多くは動物実験で発がん性と確認されており、人体に対して発がん性を持つ物質だと考えられています。


高温で調理することの多いベーコンは、特殊な扱いを受けています。というのは、高温はニトロソアミンの形成を誘導しやすいのです。そのため、アメリカ農務省は、ベーコンの加工に使用する亜硝酸塩の量を他の製品よりも低く設定しています。


少量のニトロソアミンは、魚などの食品中で自然に発生しています。また、私たちの口の中の細菌は、多くの野菜に存在する硝酸塩を亜硝酸塩に変換し、その亜硝酸塩が野菜のタンパク質にはたらきかけてニトロソアミンが形成されます。


さらに胃袋の中で、酸性度の高い胃液がアミンを含有する様々な食品に作用して、ニトロソアミンができることもあります。ビールとタバコにも、少量のニトロソアミンが含まれています。


あまりぞっとした話ばかりしていましたが、亜硝酸塩やニトロソアミンを避けて保存加工肉を食べないなんてことはしないでください。今の社会で、新鮮な肉だけを食べるような生活はできません。新鮮さを売りにしている食べ物のほうが菌が繁殖していて危険だったりします。


保存処理をしてから流通させるべき加工肉製品もあります。ボツリヌス中毒の危険性と秤にかければ、慎重に規制された少量の亜硝酸塩添加物は、払っても損のない代償だと思います。

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