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美味しいシメサバ。塩を振って酢で締めるのはどうして?

Saba (Mackeral)

シメサバの表面が白っぽいものは食べても大丈夫

魚の主成分はタンパク質です。タンパク質の多くは、編成と言って、熱にかけると凝固する性質があります。編成は熱だけで起きるものではなく、他の刺激によっても起こることがあり、塩を加えたり、酢を加えても凝固します。


酢のpHは2.4~2.8で、水素イオンがプラスの電気イオンを帯ています。これがタンパク質の分子のマイナスの電気を中和してしまいます。そのため、マイナス同市で互いに反発していたタンパク質の分子が、今後は互いに引き合って一つ塊になろうとするのです。

魚の酢につけておくと、それまで細胞の中で水に溶けて流動性のあるゾル状態になっていたタンパク質の一部が水に溶けなくなり、白く細かい粒子が寄り集まった状態になります。これが白くなる原因です。こうしたタンパク質の編成は、分子の形が変化するために起こるもので、栄養価にはあまり関係ありません。

酢によるタンパク質凝固の性質を利用した調理法には、煮物のアク発生防止法があります。魚を軽く酢で締めてから煮ると、アクの出少なくなるのです。

その理由はこうです。煮物のアクは、水溶性タンパクが湯に溶け出て、それが熱で凝固して表面に浮上したものです。したがって、あらかじめ酢で水溶性タンパクを凝固させておくと、煮るときにアクの発生が少なくなるわけです。それにより吸い物などで、澄んだ美しい汁を作ることができます。

また、酢は魚の臭いを消してくれます。酢は魚臭の主成分であるトリメチルアミンを中和し、臭いだちを抑えてくれるのです。

塩を振ってから酢で魚肉を締める

魚を酢で締めるのは、生臭みを消し、タンパク質を凝固させることによって、魚の旨味成分を内部に閉じ込めることを目的とします。でも、酢だけ単独で用いるのではなく、塩締めしてからのほうがよく締まって美味しくなります。

そのことは、次のような実験から裏打ちされています。

サバの実の柔らかさを、pHの濃度の違いによって調べたものです。膨潤度が高いほど身は柔らかく、低いほど締まって硬いのです。

生きているときの魚の身は、pH7.2前後のほぼ中性です。死ぬとpHは低下し、このときの身は硬くコリコリとして、刺身にちょうどよい状態です。実験のサバでは、中性よりも少し酸性に傾いたpHのときにもっとも強い凝固が起こりました。しかし、同時に次のようなことも分かったそうです。


生のサバでは、さらに酸性度が強くなると、逆に凝固しにくくなり、身は柔らかくなってしまったのです。


ところが、あらかじめ少し食塩を加えておいたサバでは、pHが低くなっても凝固性は失われず、柔らかくならなかったのです。


魚肉にあらかじめ塩を加えておくと、食塩が魚肉に染み込み、タンパク質が食塩水に溶けたような状態になり、全体として柔らかなゲル状態になります。


ところが、同じタンパク質でも、魚に含まれるタンパク質のアクトミオシンは、塩分であると水に溶けにくくなるので、酢に漬けるとかえって締まりやすくなるのです。


つまり、魚の酢締めは、塩との共同作業によって始めて可能になるわけです。

酢は漬物の歯触りをよくする

酢は魚だけでなく、野菜の組織を締める働きもします。ナスやキュウリの漬物を作るとき、歯触りをよくするにはミョウバンで締めるといいと昔から言われています。ところが、ミョウバンはアルミニウム化合物です。最近では、アルミニウムの脳蓄積と痴呆との関係が取り沙汰されるようになり、ミョウバンの使用は問題視されるようになっています。

そこで、ミョウバンの代わりに酢が使えます。あらかじめ野菜を酢で締めてから、ヌカ床に漬けるといいです。コリッとした漬物が出来上がります。これは、野菜のペクチン組織が酢で締まるからです。

酢はスジ肉を柔らかくする

酢が魚肉のタンパク質を凝固させる働きをすることは分かっていますが、まったく正反対の現象として、スジ肉を柔らかくする働きもあるというから不思議です。

魚肉の場合、タンパク質の凝固作用ですが、スジ肉は同じタンパク質でもコラーゲン組織と呼ばれる硬タンパク質を膨潤させます。つまり、スジ肉は酢によって柔らかくなります。


硬い牛肉などには、スジや軟骨、皮を含む結合組織などのコラーゲン組織が多く存在します。これを酢に漬けておくと、コラーゲン組織は軟化するのです。スジ肉料理の好きなファンは、ぜひ試してみるといいでしょう。


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