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Love Lab Kitchen

~料理に少しのサイエンスを、キッチンにクリエイティブを〜

味覚+嗅覚=風味、料理は味と匂いで完成される

味の話

http://www.flickr.com/photos/15426517@N07/16131961631
photo by IamNotUnique

味覚+嗅覚=風味

味は舌の上の味蕾によって検出される感覚の集合(味覚)であり、匂いは鼻によって堅守される感覚の集合(嗅覚)です。我々が通常、味だと思っているものの多くは実際には匂いなのだが、これら2つの感覚の組み合わせの結果として最終的に風味が知覚されます。


カレールーを一口食べたときに感じる風味とは、舌によって感じられる味と、鼻によって感じられるスパイスの匂いの足し算です。人間の感覚では、この感覚が口の中のどこかで感じられる単一の入力であるものと自分自身の脳によってだまされていることです。


しかし、実際には風味の「感覚」は、脳の灰白質で生成される刺激の一つです。味と匂いをデータとして脳に入力して、その解として風味が生成されます。


実のところ、人間の脳は口の中のセンサー検出された味以外に、例えば唐辛子の辛味(化学的な辛味)やステクチャー(食感)も加味されていますが、これらのデータは風味の生成に当たっては小さな役割しかありません。

風味を生成するのに最も重要な変数は、使用する個々の食材の品質/鮮度です。品質を判断するのはまず匂い、例えば、イチゴが食欲を掻き立てられる匂いを放っているなら、たぶん美味しいでしょう。後は見た目、魚が新鮮に見えて、粘ついておらず、匂いも臭みも感じられないのなら、ほとんど大丈夫でしょう。


例えば、アボカドに匂いもなく、サッカーにも使えそうな硬さだったら、そんなアボカドから美味しいグアカモーレができるとは期待できませんね。


そして、賞味期限どころか消費期限を1週間も過ぎてしまい、細菌が繁殖してしまって包装を開けたときに、匂いで存在感を示してくるような肉は、絶対に使うべきではありません。


トマトをベースにした料理を美味しく作るには、使うトマトがトマトそのものの味や匂いをしていなくては意味がありません。スーパーでは、「トマト」と表示があったとしても、その食材を手に取ってトマトのよい香りもきちんと感じるかどうか確認しなくてはなりません。トマトの表示があるからといって、自動的にそれが料理に使うべき価値があるとは限りません。


まだ熟していないトマトを取ってしまっただけという場合もありますが、本当に風味の良い品種ではない可能性をチェックしなければなりません。すべてのトマトが悪いとは言いませんが、現在の大量生産されたトマト中には、見た目は良くても風味を大きく損ねてしまったトマトも紛れこんでいることも多々あります。


大量生産されたトマトには、大量に製造するためには、効率が重視されてしまいます。そのために、風味を増大させるための生育環境や育て方といった変数が、あまり軽視されてしまうことがあります。


せっかく時間、お金、労力をかけて何か新しい料理に挑戦しても美味しくない結果になってしまえば、特に料理初心者には失望してしまうかもしれません。より成功する確率を高めるためには、最初からよい食材を使うこと。


作りたい料理のレシピに指定された食材に低品質のもとの使うくらいなら、何かその代わりになる風味のよい食材を使った方がいいことに代わりありません。キャベツを買いに行って、しなびたキャベツしかスーパーで見つからなかったときには、代わりに白菜やレタスでよい食材を探してみましょう。レシピに変更を加えることに躊躇しない、それが料理を上達するコツなんだと思うのです。


さっきも言った通り、食材の品質を知るためには、あなたの鼻が頼りです。フルーツであれば香りが高く、魚であれば新鮮なほどほとんどまったく匂わず、そして肉はわずかに獣っぽい匂いを感じると思いますが、美味しい食材の肉は決して悪い匂いではないはずです。


ただし、匂いを嗅いでみることが絶対的な確実の方法でもありません。だいたいチーズは臭い、汗だくになった靴下のような匂いがするチーズもあります。なんの匂いも感じない食中毒の原因菌もあります。だから、ある程度の常識を働かせることが肝心です。それでも、

※良い風味を発見し、悪くなった食材を識別するためには最も頼りになる手段は嗅覚であることには変わりありませんが。。。

舌が味覚を感じること

人間の舌は、化学物質の検出器として働いています。舌の表面にある味蕾の味覚受容器は、口に放り込まれた食材が唾液によって分解されて生じた化学物質やイオンに反応しているのです。刺激が引き起こされると、味覚受容器は対応する入力(つまりは、味)を脳へ送り、脳は各種の信号を取りまとめて味覚の種類とその強さのデータとして出力します。


2,400年前にレウキッポスが初めて記述した西洋料理の基本書には、塩味、甘味、酸味、そして苦味が味覚として記されています。しかし、味覚の研究者たちは、レウキッポスは味覚の一部しか記述されていませんが、最近ではこれらの味の他にも味と呼べるものがあることを発見しています。

その代表的なものが日本人に最も愛されている味、旨味です。おおよそ100年前、池田菊苗博士は5番目の味覚と発見し、これを「旨味」と名付けました。


この「旨味」にはブイヨン、パルメザンチーズのような熟成チーズ、きのこ類、肉などの食材に含まれ、グルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸が旨味として検知されます。


さらに、最近の研究では、舌にはまだまだ他の化学物質が検出することができることが分かってきました。脂肪酸や一部の金属などの化学物質も舌で検出しているそうです。

私たちの味蕾は、アルコールやカプサイシンなどの化学物質によって引き起こされる化学反応による口への刺激も検出し、脳へ報告しています。


ここで、一つ実験を。鼻をつまんだ状態でシナモンを一つまみ口に入れ、その後レッドペッパーを少量口に含んでみてください。


シナモンとレッドぺッパー辛味の感覚を比較してみてほしいです。カプサイシンは催涙ガススプレーに使われたり、造船業界でも船底の防汚塗料として利用されたりしています。(船底に張り付いたゼブラ貝も、カプサイシンの細胞への刺激が嫌いなのです。)


細胞への刺激は、カプサイシンのような化合物によって引き起こされる辛味だけとは限りません。強烈な刺激は、これ以外の化合物によっても引き起こされます。


四川料理に使われる花椒や、アフリカで使われるマニゲットは、穏やかな辛味と、しびれるような感覚を引き起こします。オランダセンニチという別の植物の花は「Szechuan button」と呼ばれ、これにはスピラントールという化合物が多く含まれています。スピラントールは、よく「9V電池の端子を舐めたときのような」と形容されますが、ひりひりするような感覚を引き起こします。


舌にどれだけの種類のセンサーがあるか、あるいは味覚がどのようなメカニズムによって引き起こされるかにかかわらず、料理でも同じことを心がければよいでしょう。


それは、各種の味のバランスを取ることです。


一つの強調された風味を美味しいと思うかどうか、あるいは味のバランスが取れていると感じるかどうかは、あなたの脳の中の配線具合と、普段、基本的な味覚へどう反応するかの訓練に依存しています。


コーヒーに大量のミルクと砂糖を入れて飲むのが大好きだったり、チョコレートでコーティングされたキャラメルやナッツがたっぷり入った甘いお菓子に目がなかったりするかもしれません。


しかし、「なぜ」これらの味が美味しいと感じるのでしょうか?それは、人間の身体が脂肪や砂糖、そして塩を欲しているからです。おそらく、これらの成分は体内で作られず、かつ、また比較的に体内で簡単に栄養として活用することができるためでしょう。


当然、基本的な生理学に加えて、あなた自身の生活環境や、文化的な背景も味覚のバランスにかかわってきます、つまり、あるイタリア料理やフランス料理で愛される風味と、和食で愛されている風味では、理想的なバランスの取れた味の定義が異なります。


アメリカ人はヨーロッパ人よりも甘い味の食品を好むと言われていますし、旨味は日本料理では欠かせない味覚ですが、西洋料理では重要視されていないと思えるかもしれません。友達や恋人のために料理を作る際には、あなたがベストと思っている味が、相手にとって好ましい味とは違っている場合があることを心に留めておかなければなりません。

人間の嗅覚の仕組み

味覚は数種類の基本的な味に限られているが、一方で、嗅覚には味覚とは比べられないほどの大量のデータが溢れかえっています。人間の鼻も1000種類以上の化学物質を検出することができ、また10,000種類以上の匂いを嗅ぎ分けることができるそうです。


味覚と同様に、人間の嗅覚も、感覚細胞が特定の化学物質に触れることで「オンになる」ことで匂いを認識します。嗅覚によってこれらの特定の化学物質を「匂い物質」と呼んでいます。


嗅覚の受容細胞は鼻腔内の嗅上皮に存在します。鼻の穴を通ってきた揮発性の化学物質に反応します。つまり、空気中を漂っている化学物質が鼻腔を通過し、化学受容器によって検出されます。


人間の嗅覚は、味覚と比べてもはるかに鋭い。一部の化合物については、人間の鼻は1兆分の1のオーダーの匂い物質を検出することができます。


匂いを検出する化学受容器がどのような働きをしているのかについては、単純な反応から複雑な化学反応モデルを使うものまで、いくつかの説があります。


最近の説によれば、匂い物質はいくつもの異なる種類の化学受容器と結合することができ、また味蕾とは異なり、1つの化学受容器ではいくつもの異なる種類の匂い物質を検出することができます。


つまり、どんな匂いであっても多数の受容器を刺激するので、脳はファジーなパターンマッチングアルゴリズムのようなことを行って、過去の記憶を引き出しているというのです。



例えば、バラの花の上にかがんで鼻をクンクンさせたときに感じるものだけが嗅覚だと思っている人もいるかもしれませんが、それでは半分しか理解したことにはなりません。


匂いは、口に入れた食物からも、口と鼻を間、咽頭を通って鼻腔に到達します。つまり、食物を噛み砕きながら「味わっている」ときには、同時に食物の匂いも嗅いでいることになります。


調理の際には、匂いとして感知できるのは料理に含まれる揮発性の化合物/成分だけということに留意しなければなりません。匂いで食欲を掻き立たせるために、他の不揮発性の化合物を揮発させること。


調理中にアルコールを加えることで、アルコールが料理中に蒸気圧を高め、その化合物の表面張力を減らし、常温で不揮発性の物質であっても蒸発を助け、化学受容器まで届きやすくしてくれるのです。

風味を高めるためには体温に近い温度に保つこと

嗅覚には、料理の温度にも重要な役割があります。食品の匂いを嗅ぐのが大変なのは、化学物質の揮発が温度によって変わるためです。


味覚もまた温度によって影響されます。研究者たちは、主要な味覚の強さが食品自体の温度と舌の温度の両方によって変化してしまいます。理想的な温度は体温に近い、舌の表面の通りの35℃です。


食品の温度がこれよりも低いと味は弱く感じられるようになってしまいます。特に砂糖は、この傾向が強く出てしまいます。赤ワインは香りを楽しむために室温で飲むのが良く、白ワインは揮発性の化合物と甘味を抑えるため、冷やして飲むほうがよいと言われています。


白ワインに魚を合わせることは一般的ですが、白ワインを冷やすことで料理の風味を打ち負かさないように抑えるためです。


他にも舌そのものの温度の影響があります。例えば、冷たいソーダを飲んでいるとき、飲むに連れて舌の温度はどんどん下がっていきます。そして舌の温度が下がると、だんだんとソーダが甘く感じられなくなります。ほったらかしにされたぬるいソーダがあまったるく感じてしまうのはこれが理由です。冷たいときもよりもぬるくなってしまったらずっと甘く、うんざりするほどです。

このことを、キッチンの中でどのように活かしていけばよいでしょうか。冷たくして食べる料理を作る際には、温度が嗅覚や味覚に与える影響を心に留めなければなりません。

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