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天ぷらの衣をサクッとフワッと揚げるコツは、冷やしながら水で溶いていく

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photo by Fabiano Kai

天ぷらの衣をフワッとサクッと軽く揚げるには小麦粉のグルテン化を知る

小麦粉に水を加えて練ると、粘りが出てくるのはご存知でしょう。うどんやパン作りの職人が汗を流して、小麦粉を手でこね、足で踏んでいるのは、ひたすら粘りを出すためです。


小麦粉に水を加え物理的な力を加えると、グルテニンとグリアジンというたんぱく質が水を吸収して、絡み合って網の目のようになります。グリアジンが流動性と粘着性を、グルテニンが男性を持ちます。


この網目構造全体がグルテンと呼ばれます。グルテンは網目の間にデンプンや水分を取り込んでいます。

簡単な実験で、グルテンの実物を見ることができます。良く練った小麦粉を水で洗っていると、デンプンが流されて、あとにねばねばしたゴムのようなものが残ります。これがグルテンです。


天ぷらは、水をたっぷり含んだ衣を食材にまとわりつかせます。


グルテンの弾性がなければ、挙げても衣がふわっと膨らまずに、種に小麦粉がべっとりとくっついてしまいます。


反対にグルテンが強すぎれば衣が粘ります。粘ついた衣には、温度が上がっても水が蒸発する隙間があります。グルテンが水分をしっかりと捕まえて、離してくれないのです。


こんな衣で揚げても、水気が抜けていない、もったりとした天ぷらができるだけです。


というわけで、衣のグルテンは必要最小限に留めなければなりません。


そのためにはグルテンになりにくい小麦粉を使います。販売されている小麦粉は、種類によってグルテンカの度合いが違います。


小麦粉を水で練ったときの湿ったグルテンの割合が全体の約40%であれば強力粉、約30%であれば中力粉、約20%であれば薄力粉と分けられています。


サクサク感やふんわり感を大切にするクッキーやケーキ、そして、天ぷらの衣には薄力粉で使われています。強力粉で天ぷらを作ると、ぼってりとした塊になり、油の中で衣の花が開くような、あの感覚は得られません。

衣を混ぜるときには大きな箸を使って十字に切るように混ぜる

いくら薄力粉でも、熱真にかき回していれば、グルテンが生まれてきます。衣はかき回すのではなく、十字を切るように端を直線に動かします。二、三割は粉が残っているぐらいで、水溶きを追えます。ダマができてもいいので、混ぜ合わせないのが原則です。


水溶き用の端は、できるだけ太いものにします。細い箸ではなかなか混ざらないので、動かす回数が増えて粘りを出してしまうからです。橋を使わずに、泡だて器でさっと混ぜるだけの方が簡単かもしれません。


小麦粉は使う前に軽く振っておきましょう。ダマができにくいし、サラサラの粉なら、すぐに水溶きできます。

天ぷらの衣は冷水で溶いて小麦のグルテン化を防ぐ

冒頭で説明したように熱も大敵です。グルテン化は、温度が高いほど進むので、冷たい水を使った方がいいです。氷水まで用意しなくても良いが少なくとも15℃以下(冬の水道水)の水を使いましょう。


ただし、小麦粉と水を混ぜている間に、温度が上がってしまい粘りが出てくると思います。混ぜるときには、氷水を少しずつ足していくイメージで混ぜていきます。使う容器や小麦粉を予め冷蔵庫に入れておけばもっと効果的です。


衣の入った容器を火元の近くに置いておくなんて絶対やらない方がいいです。


水と一緒になった小麦粉は放置しておくだけでもグルテンができてくるので、衣ができたら、すぐに揚げ始めることです。5分もすれば、衣の粘性は1.5倍も上がってしまいます。たくさんの天ぷらを揚げるときには、面倒でも衣は何回かに分けて作りましょう。


揚げている最中に衣がはがれてくるのは、材料の表面に水気が多すぎるからです。決して衣の粘り気が足りないからではありません。エビや魚、洗い立ての野菜などは、キッチンペーパーなどで抑えて水気を取りましょう。また、古い魚介類は表面に水が出やすいので注意して下さい。


冷凍物は、氷が残っていると衣が付かないだけではなく、揚げるときに激しく油が飛び散るし、余分な水分が油を劣化させてしまうので、必ず一度解凍してから使うこと。衣の温度が上がらないように熱は加えず、できれば自然解凍か水温で解凍することをオススメします。特に、冷凍エビの尾には、結構な氷が付いているので、しごいて落としてやるのもいいでしょう。




天ぷらの衣には、卵、アルコール、ベーキングパウダー、コーンスターチなどの隠し味

天ぷらの衣は水と小麦粉だけでもいいのですが、普通は卵も混ぜるものです。予め溶いた卵を冷水に混ぜて、そこに小麦粉を入れます。


小麦粉に卵が入ると非常に膨らみやすくなります。卵液には空気が入って、それが熱で膨張するからです。膨らんで隙間ができると、そこから水分が抜けやすくなるので、衣がカラリと軽く仕上げてくれます。


卵以外にも衣に混ぜると効果的な食材があります。


例えば、ビールなどのアルコール類、小麦粉を溶いたときにダマができにくい上にグルテンの粘りを抑えるので、カラリと揚げることができます。


それから、ケーキ作りに欠かせないベーキングパウダー。水に溶いて熱を加えると二酸化炭素を発生させ膨張するので、卵と同じように衣膨らませてくれます。ベーキングパウダーに多く含まれている重曹は、固まると水を吸収しにくいので、揚げたあとも衣がベタベタしないが、小麦粉のフラボノイドという色素と反応して衣を黄色っぽくします。多すぎると揚げるときに油が強く跳ねるので注意が必要です。


コーンスターチも天ぷらを長持ちさせます。コーンスターチはトウモロコシから取ったデンプンですが、吸湿性が大変に低く、いったん固まると糊のように形を崩しません。


惣菜として売られている天ぷらには、時間が経ってもべったりしないように、これらの隠し味が使われているものです。

天ぷらの全仕事: 「てんぷら近藤」の技と味

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