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Love Lab Kitchen

~料理に少しのサイエンスを、キッチンにクリエイティブを〜

美味しくワサビをおろすなら、ゆっくり押し潰して辛味成分を引き出す

http://www.flickr.com/photos/56093324@N02/9452965932
photo by Carlos Gracia

ワサビがツンとくるのはどうして?

ワサビに含まれる辛味成分である硫化アリルは揮発性のため、口に入れた瞬間にツーンと鼻に抜け、味覚と嗅覚を同時に刺激し、ついでに涙まで出させてしまいます。

ところが、本ワサビを丸ごとかじっても辛さは感じられません。この硫化アリルは、硫黄化合物なのですが、本ワサビの中にそのままの状態で含まれていません。

すりおろすことで、初めてワサビとして組織細胞が壊れ、配糖体という糖分と結合した成分が水とミロシナーゼという酵素で加水分解され、アリルイソチオシアネートなどの辛味成分に変化するためです。


日本人にとってワサビは辛いというのが常識ですが、ワサビを利かせた握り寿司を口に入れて、ツーンとくる、あの感覚が美味しいと思えるようになって、大人の舌になったことだと錯覚したことがあります。


欧米人はワサビの辛さが苦手な人が多いようで、握り寿司でも「サビ抜き」にしてもらう人が目立ちます。


ヨーロッパ原産の西洋ワサビという植物もありますが、この西洋ワサビは日本の本ワサビとはまるで違う風味を持ちます。


西洋ワサビは、乾燥後、粉末にしてマスタードを加え、「粉末ワサビ」として商品化されています。これは本ワサビから作られたものではないので、本物の香りには書けます。寿司などには、なんといっても、本ワサビをすりおろしたものが一番合うでしょう。本ワサビは正式な学名を「Wasabi Japonica」といい、英語名でも「Wasabi」なのです。

ワサビを美味しくすり下ろし方

ところが、酵素が作用して配糖体がアリルイソチオシアネートなどになるには若干の時間がかかります。そこで、ワサビをすりおろすときには、慌ててはいけません。



おろし器には金属、セラミック、プラスチックなどいろいろあり、材質だけでなく、刃の付き方も違いますが、ワサビの細胞を細かく押し潰し、辛味成分や余すことなく引き出せるの、“鮫川”がいいでしょう。


また、大根をおろすときのように、力を入れておろすと、おろしたワサビが粗くなってしまうので良くありません。力づくで雑にすりおろすと、キメが粗く、粘り気や香りも少なく、風味が損なわれてしまいます。


できるだけ細かく細胞を砕いて、酵素が十分に作用すればするほど、より強い香りと辛味が生まれるのです。「カラシは怒って溶け」ですが、「ワサビは笑いながらすれ」が正解。


また、ワサビは上へ上へと育っていくため、茎や葉の付いている方が柔らかく、香りや粘りも強いので、茎や葉の付いている方からすりおろすと新鮮な美味しさが味わえます。茎を取り除いて泥を洗い落としてゆっくりおろします。辛味成分は根茎部に多く含まれているので、柔らかい上の方からすりおろすことで辛味成分が分解されやすくなるのです。


さらに、おろしてからしばらく寝かせた方が、より分解が進んでいい香りと辛味を生み出します。ただし、揮発性だから、おろして3分~4分もすると揮発してしまいます。せっかくの辛味が飛ばないように器に入れてひっくりかえしておきます。包丁でパンと叩いたりすると、またひときわ香りが強まり辛味も増します。お寿司屋さんの板前さんがやったりすると、粋なものです。


大根やカラシ、ニンニクなどにも同様の辛味成分を発生させるアリル化合物が生成されるので、すりおろすとそれぞれ独特の辛味が生まれます。また辛すぎる大根おろしに酢を入れると、辛味を生む酵素の働きが抑えられて、適度な辛さになります。


ただし、大根おろしは辛いが、煮た大根が辛くないことでも分かるように、この辛味成分は加熱してすると揮発して消えてしまいます。おろしのワサビが辛すぎたときに、熱いお茶を口に含むなどと落ち着くのも同様の効果があるためです。


加熱する料理に辛味を付けたいときは、唐辛子や生姜などの、熱によって揮発しない辛味成分が使われるわけです。





粉ワサビは大根の下ろし汁で溶く

ただし、生ワサビは実は高級品になります。それは本ワサビと呼ばれる日本の生ワサビが栽培される地域はかなり限られたものになっているからです。生ワサビが栽培される場所の条件として、清浄な空気と水、そして流水が欠かせないことから、一般的な家庭で生ワサビが出ることはありないのかもしれません。


一般的には粉ワサビが使われているのではないでしょうか。粉ワサビは日本のワサビではなく、西洋ワサビを細かく粉末されたものです。日本ワサビは生ワサビと違って畑で行いますので、さほど栽培するのが難しくありません。


粉ワサビは水を加えて溶きますが、酵素の働きで辛味成分ができるのですから、カラシと同じように水よりもぬるま湯を使った方がより活発に辛味成分ができます。


さらに、大根おろし汁を使って溶くと、新鮮な感じも加わって、もっと辛い溶きワサビができます。


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