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Love Lab Kitchen

~料理に少しのサイエンスを、キッチンにクリエイティブを〜

おでんが美味しくなる季節、おでんはカラシで美味しくなる

http://www.flickr.com/photos/56638827@N00/3134327343
photo by shinyai

おでんの美味しい季節になりました

10月も中旬になりまして、そろそろ暖かい食べ物が食べたくなったりしませんか。私は、コンビニで売られているおでんを見て、今非常におでんが食べたい状態でブログの記事を書いています。


ということで、今日はおでんに欠かせない調味料“カラシ”について書いていきたいと思います。日本では、チューブタイプのカラシが一般的ですが、欧米では、いわゆるマスタードとして親しまれている調味料ですね。

カラシは怒って溶け

このマスタードという名称はラテン語の「ムスタムアーデンス」から派生したものです。ローマ時代の食の頃、ブドウ液(ムスト)と、当時シナビスと呼ばれていたカラシの種子とを混ぜ合わせて、ペースト状のものを作っていたことがマスタードの起となったムスタームアンデス(辛いムスト)です。このムスタームアンデスがのちに「マスタード」と呼ばれるようになり、いつのまにか、マスタードの種子そのものの呼称になったそうです。


カラシは和名で「芥子」と書き、かなり古い古書にも登場し、日本料理に広く使われていたそうです。「からし菜」としても知られるように、歯の部分を漬物に利用しますが、一般的には種子をスパイスとして用いています。しかし、種子そのものを口に含んでも、辛味も香りも感じられません。

スパイスとして使うときは種子を粉末にして水を加えて練り混ぜるか、あるいは既に練ってある市販品を買って料理に加えるわけです。


この仕組みは、ニンニクとよく似ています。粉末状のカラシには、辛味成分そのものは含まれていませんが、辛味成分に変化する母体成分が酵素の働きで加水分解され、辛味成分(カラシ油)が生成されます。


この酵素は粉末にしたカラシ粉末の組織の中に含まれているので、強く摩擦して組織を効率よく破砕するほど辛味も芳香も立ってきます。昔から「カラシは怒って溶け」と言われていますが、これはカラシの粉に少なめの水を加え、堅めに溶きなさいという教訓です。反対に水分が多いと摩擦力が弱くなり、組織が十分に破砕されないので酵素が十分に働かず、結果として辛味が弱くなるようです。


加熱すると酵素の活性が失われ、辛味が感じられなくなるのもニンニクの場合と同じです。溶きカラシ熱いおでんに漬けて食べる分には大丈夫ですが、おでんの中に加えて煮込んだ場合は気が抜けてしまいます。西洋料理にはたっぷりの練りカラシを肉に付けて加熱する料理・肉の悪魔焼きがありますが、これは加熱によって程よく辛味成分が失われる香味間を楽しむ料理と言えます。


このようにカラシの辛味成分が酵素の働きでいることを知っていれば、料理をするときにいろいろ工夫ができるでしょう。

カラシを上手く使いこなすコツ

辛味成分はカラシの粉が水気をすって粕分解を起こした結果、生成されるので、溶いた後すぐ使うより、5~10分ほど置いた方が辛味成分が多くできて辛くなります。また水よりもぬるま湯で溶いた方が、酵素の働きが活発になるため、辛味が強くなります。


練ってから時間がだいぶたつときなどは、辛味成分が揮発して弱くなっているので、料理に使う直前にもう一度かき混ぜます。こうすると酵素の働きが促され、再び辛味が強くなるわけです。


練りカラシを保存するときには、レモン汁や酢、ワインなどを加えて練っておくと長持ちします。これは酸性状態にすることによって、酵素の活性が阻止されるからです。反対に、辛味成分を味わいたいときは、カラシと一緒にレモン汁、酢、ワインなど酸性の強い食材を口に入れないことですね。


日本の和カラシと、欧米のマスタードはどう違う

和カラシは、マスタードよりも少し辛味が強いのが特徴です。この辛味はワサビなどと同様に、和カラシに含まれる母体成分(配糖体)が酵素・ミロシナーゼに分解され、アリルカラシ油という精油になることで生まれます。ピリッとした辛さが出汁の効いたおでんによく合うのです。


一方、マスタードの辛味成分も、同様にして酵素で生まれますが、マスタードに使われるカラシ油はパラハイドロオキシベンジルカラシ油という、アリルカラシ油と比べてはマイルドな味わいが特徴です。こちらは、ソーセージなどにたっぷりと付けて、マスタードも一緒に味わうという食べ方に適しています。


和ガラシは出汁の旨味をより引き立てるピリッとした辛味が特徴ですが、マスタードにはピリッとした辛味ではないため、マスタードはおでんに付けてもメリハリのない味になってしまいます。昔は同じようなものと思い、マスタードをおでんに使ってましが、確かに美味しくはならなかったことを覚えています。


粉末のカラシは和カラシもマスタードも40℃くらいのぬるま湯で溶いて良く練り、器を伏せてしばらく置いた方が酵素による分解が進んで辛味が強くなります。


カラシナには、もう一種類、黒カラシという黒か黒褐色の種子が取れるものがあり、これはブラックマスタードまたはブラウンマスタードと呼ばれています。ソーセージに付けるあらびきマスタードに入っている黒や褐色の粒がこのブラックマスタードです。この辛味は和ガラシとマスタードの中間ぐらいに位置します。


日本で、市販されている練りカラシはたいていが和ガラシとマスタードをブレンドして双方の特徴を生かした商品がほとんどです。「カラシ」と単に表記されているものは、ほとんど混合されているものと思って間違いありません。


おでんに合わせてカラシを使うのであれば、マスタードを混合していない和ガラシのピリッとした辛味成分の方が出汁の旨味が引き出され、より味わい深いものになると信じています。今年の秋から冬にかけておでんを楽しみたい方は、ぜひ「和ガラシ」と敢えて表記された和ガラシ100%のカラシで、おでんを味わってみて下さい。


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