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Love Lab Kitchen

~料理に少しのサイエンスを、キッチンにクリエイティブを〜

ナチュラルチーズの特性を料理に活かすために

http://www.flickr.com/photos/8500185@N04/1002124782
photo by AMANITO


なぜ、チーズが日本で好まれているのか

日本では少し前まであまり馴染みのなかったナチュラルチーズだが、意外と短い期間で広く定着し、今では多彩な品揃えとなっています。短期間で普及した理由としては、日本人好みの旨味成分のグルタミン酸がまず挙げられます。


一方で、ナチュラルチーズには特有の香りがあるから、これに対して慣れない人が存在することも事実です。チーズの香りに馴染みにくい人というのは、青年期までにナチュラルチーズの風味に親しむ機会のなかった人ということができそうです。

ひと昔まではナチュラルチーズは一般に高価で、なかなか購入しにくかったし、日本製のチーズは、原料を輸入して、それを加工し、風味を調整したプロセスチーズが主流でした。


プロセスチーズは、周知のように、ナチュラルチーズを原料にして、それをいったん溶かし、調味などして、再度固形にしたものです。原料のナチュラルチーズは何種かを混合するし、さらに調理するから、本来のチーズが持つ風味はなくなっています。

プロセスチーズでは、ナチュラルチーズが持つ独特の風味を味あわないということになります。それだけに、プロセスチーズで風味を覚えた人は、ナチュラルチーズの風味を受け入れにくい場合もあるということになります。


一方、プロセスチーズをあまり経験しないで、ナチュラルチーズの風味を覚えた人にとって、ナチュラルチーズは大きな魅力のある食品となっているようです。その上、ナチュラルチーズには、グルタミン酸の量が非常に多いのです。


これが、日本人の嗜好にぴったりなのです。

日本人の嗜好と“グルタミン酸”

日本人の好む味の中に、旨味成分があり、中でも、グルタミン酸に対する嗜好がずば抜けて強いものが見られます。それは、長い期間、グルタミン酸の旨味成分が強い食べ物に慣らされてきたからでしょう。


例えば、日常よく使用する調味料では、味噌、醤油とともにグルタミン酸が旨味成分の筆頭成分です。清酒のような嗜好品でも、味覚にまず感じられるのはグルタミン酸の味です。


また、出汁に使用する昆布も、旨味の主成分はグルタミン酸です。さらに、日常よく飲まれる緑茶の旨味も、グルタミン酸とグルタミン酸の化合物であるテアニンから成っています。以上のことから分かるように、日本人の日常の食生活は、グルタミン酸の旨味なしでは成り立たないとも言えます。


グルタミン酸を多く含むナチュラルチーズは、香りの点さえ解決できれば、味については何の問題もなく日本人に受け入れられる要素を持っている食品です。


香りについても、初めからナチュラルチーズに馴染んできた人なら、簡単に慣れてしまうと思われます。なぜなら、スルメや塩辛、納豆といったかなり特有の風味を持つ食品でも、慣れている人にとっては抵抗がないし、それどころかかえって良い風味と感じるからです。


ナチュラルチーズも同様で、初めから慣れてしまえば、グルタミン酸の味とともにその特有の風味で、魅力のある食品となることは間違いありません。


では、ナチュラルチーズにはどの程度のグルタミン酸が含まれているのかというと、硬いタイプのナチュラルチーズで、100gの中に、5400mgと桁外れの量が含まれています。こんなにグルタミン酸を含む食品は調味料を除いては、他にないといっても良いくらいです。

チーズのもう一つの魅力は“脂肪”にある

チーズの持つもう一つの魅力はなんといっても脂肪です。チーズの脂肪含有量は、ナチュラルチーズで、25~30%もあります。しかも、舌の上でとろりと溶ける感触の良い脂肪です。これは、料理にとってプラスに作用するものです。


脂肪はギラギラした状態だと、しつこいと感じられますが、舌の上でとろりと溶けるような状態で、しかもギラギラと脂肪が浮いていない場合には、味覚に非常に良い感触を与えます。ナチュラルチーズは、この良い感触の脂肪を持つ食品です。


その上、チーズは、加熱すると溶けやすいから、各種の料理に加えたり、ふりかけたりするなど、幅広く利用することはできます。そして、チーズを使うことで、グルタミン酸の味と、独特の風味を料理につけることができるから、一見すると養父の料理のようでありながら、グルタミン酸の旨味成分を持った和風の料理を作ることもできます。


それともに、チーズの大きな利点は、非常に種類が多いということであります。特に、ナチュラルチーズは、同じ名前のチーズであっても、国や風土の違いによって、あるいはそれを作った人により、それぞれ独特の風味を持っているから、それを活かして使えば、オリジナリティの高い味を作り出すこともできます。

チーズは体を暖める

チーズの効用の一つに、多く食べると体が暖かくなることが挙げられます。だから、ビールのような冷たいアルコール飲料と、チーズがたっぷりのピザがよく合うのです。


チーズの体を暖める作用は、タンパク質によるものと、チーズを発酵熟成させたときにできるアミンの一種で“チラミン”と呼ばれる物質によるものです。タンパク質は、体温を上昇させる働きが大きいから、それが体を暖めることは間違いありません。


しかし、それだけではチーズを食べると体が暖まる理由としては納得できません。やはり、それ以外に体を暖める何かがチーズに含まれていると考えるのが適当です。その物質として考えられるのがチラミンです。


温めたワインの中でチーズを溶かし、それをパンにからめて食べる「チーズフォンデュー」という料理があります。スイス特有の料理で、スキーなどをして戻ってきたときに良く合います。チーズフォンデューを食べると冷えた体が暖まり、体の芯まではほっとした感じになりますが、こういった効用を積極的に利用して、料理を作るのも一法です。ただし、チーズフォンデューの場合には、エメンタールチーズのような、ワインに溶けるチーズでないと上手くいきません。





チーズはそれだけで料理になるのも魅力

チーズの良さは、チーズそのものが料理になる点です。例えば、チーズを何かで包み、衣をつけて揚げれば、中のチーズは、とろりと半溶けの状態になり、口当たりの良い料理ができます。この場合は、熱で溶けるチーズを選べば、特有の風味を持つ料理を作ることができます。これは何も洋風の料理だけではありません。

和風の料理でも、中国風の料理にでも応用できるし、工夫次第ではレパートリーがぐんと広がることになります。

フランスなどヨーロッパの国々では、色々なチーズを食後のデザートとして出す習慣がありますが、食後のチーズの味もまた良いものです。各種のチーズをデザートとして、和風の料理の後に食べてみるのもなかなか乙なものです。


和食のデザートにチーズは合わないと思う人も多いでしょう。驚かれる組み合わせかもしれませんが、ちょっと前までは和風の朝食にトマトジュースやコーヒーを組み合わせるのはおかしな取り合わせと考えられていたが、今ではそう不思議ではなくなっています。


習慣というものは恐ろしいもので、どんなにおかしな組み合わせと考えられるものでも、慣れてしまえば、とくに不思議でも何でもなくなってしまいます。


料理は、このように自由な組み合わせが可能であるし、現在の日本のように色々な国の料理が混在する国では、新しい食材を料理に組み込むことは可能です。だからこそ、いろんなチーズを料理に活用して冒険してみると面白いし、こうした工夫を凝らすことがまた一つの新しい料理に生み出す手段だと思われます。

チーズの図鑑<チーズの図鑑>

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