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生にはない乾燥食材の魅力

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photo by Кулинарно

生にはない乾燥物の旨味とは

料理の材料として、最近は生のものを使用する頻度が高くなっており、乾燥品はあまり活用されていないようです。


その理由としては、一昔前と違って、旬以外の時季にも生鮮食品がふんだんに入手できるようになっていることや、乾燥物を使用するときに手間のかかることが挙げられるかと思います。


しかし、乾燥物というのは、生の食材の代用品ではなく、異なる風味をもった一つの立派な食材です。乾燥物の特性を知って、上手に使いこなすことが、良い料理を作り上げるポイントとなることもしばしばあります。

現在、食材というと生の方が優れていると考える人が多いようですが、生で鮮度の良いものは全て味が良いかというと、必ずしもそうではありません。食材によっては、乾燥する、強力に加熱する、塩漬けするなどの処理を行った方が良い味になる場合もあります。


なぜなら、乾燥物には生では存在しなかった旨味成分などの物質が含まれているからです。また、旨味成分以外にも、各種のアミノ酸や糖類などが関連して、味が良くなっているものと思われます。


それだけに、こういった乾燥材量などを上手に利用すれば、料理の味を向上させることができます。

乾燥することで旨味成分の出る食材

乾燥することで、旨味成分が生成される食品の数はかなり多いです。乾燥することによって生まれた旨味を上手に利用しているのが中華です。


中華に使用されている乾燥食材は、フカヒレ、エビ、ナマコ、イカ、貝柱、アワビ、ツバメの巣、椎茸、キクラゲ・・・など、その種類も豊富にあります。そしてこれら乾燥品のほとんどが高級な食材として扱われています。


中華のメニューを見れば、素材のかなりの部分で、これらの乾燥品を利用しているし、いずれも特性を上手に活かしています。本場の中国料理と日本で食べる中国料理の味の差は、乾燥した食材をふんだんに使うかどうかの違いによるものが大きいのです。


日本医も伝統的な乾燥食品は多くあります。昆布、大根、ズイキ、サツマイモ、椎茸、カツオ節、煮干し、エビなどがその代表です。日本では乾燥品は料理の材料としてより、出汁の材料として使われることが多いのです。


そこで、代表的な出汁の材料と旨味成分について考えてみましょう。

干し椎茸の旨味成分

干し椎茸の旨味成分は、“グアニル酸”と言われるものです。この旨味成分は、干し椎茸を水で戻すときに生まれますが、これは干し椎茸に含まれている核酸系の物質が変化したものです。水で戻すときに酵素の働きによって旨味成分に変化するのです。


また、水で戻すとき、椎茸独特の食欲をそそる香り成分も生成されます。これは“レンチオニン”というが、やはり酸素の作用で生成するものです。このレンチオニンには料理そのもの風味を高める作用です。


したがって、干し椎茸を使えば、生の椎茸では味わえないグアニル酸の旨味成分や独特の風味が料理に加わるのです。逆から言えば、生椎茸を干し椎茸の代わりとして使っても仕上がりは全く異なる味になります。


これは出汁を取るときでも同じで、材料に生椎茸を使っても、ほとんど旨味成分は出ません。

昆布、煮干し、カツオ節の旨味成分

出汁というと、日本では昆布が多用されますが、昆布も椎茸と同じで、生のままでは特有の味は生まれません。

収穫した昆布の浜で乾燥し、さらに倉庫で1~3年くらい寝かせることで、旨味成分の“グルタミン酸”や甘味成分の“マンニット”などが、昆布の組織から分離するのです。


具体的には、海から昆布に付着してきた微生物が酵素を出し、それによって旨味成分や甘味成分が昆布から遊離するようになるのです。


カツオ節や煮干しも同様で、茹でて乾燥することで、旨味成分が核酸から変化してできるのです。このときにも酵素が働いています。生のときには、この旨味成分はないし、生からいきなり乾燥しても、強い旨味成分は生まれません。


イワシを茹でないで乾燥させた“ゴマメ”よりも、茹でてから煮干した“煮干し”の方が旨味成分が大きくなるのは、茹でるという作業があるからです。カツオ節の場合、乾燥だけでなく、カビ付けを行うが、このカビの酵素が“イノシン酸”という旨味成分を多量に作り出しているのです。

乾燥物の臭いを上手に消す方法

乾燥物は、それぞれに特有の臭いがあります。これは、乾燥の過程で、材料の中に含まれている成分が酸化などの変化を起こすためです。大根のように含硫化合物を含むものは、乾燥により独特の強い臭いを生じる傾向にあります。


このように強い臭いのあるものは、戻すときに水を替えたりさらしたりして、余分なにおいを抜く必要があります。しかし、臭いのあまり強くないものはその必要がないし、干し椎茸のように臭いが良い感じのものは、戻し汁をそのまま出汁に使うなどその臭いを活かすことが大切です。


少し臭いのある乾燥材料でも、炒めるなど調理に油を使用する場合は、油によって臭いがカバーされるから、あまり気にする必要はありません。


出汁を取るためには、何種類もの乾燥材料を煮だすような場合には、卵白や卵の辛でアク引きを行うことが多いが、これで十分臭いを抜くことができます。卵白や卵の殻についている卵白が臭いの成分を吸着するからです。その理由は、卵白がほとんど純粋のタンパク質でできているからです。


卵白のように水溶性のタンパク質は、水の中に分散する性質をもっていて、これを加熱すると凝固するが、このときに、油や遊離する細かい粒子とともに、臭い成分も吸着してしまうのです。


また、甘味を加えることで、臭いを消す方法もあります。甘味が加わっても差支えがないような料理の場合、少量の砂糖を加えると、乾燥物特有の臭いを分からなくすることができます。甘味は、味覚に対し、臭いや味を隠してしまう働きがあるからです。


しかし、甘味は材料の持っている微妙な風味を消してしまうこともあるので、砂糖を使って臭いを消す場合には注意が必要です。


こうした工夫さえすれば、乾燥した食品にはいろいろ面白い使い方があります。例えば、スープの出汁を隠し味として干し貝を加えれば、旨味が潜んだ独特の味に仕上げることもできます。


乾燥物にしかない旨味成分があること常に念頭に置いて調理をすれば、上手に隠し味を付けることができるし、味の差別化が意外と簡単にできることになります。



乾燥品の保存と選び方

乾燥品の独特の旨味成分は、その材料の収穫された場所、方法、鮮度、材料の乾燥の方法などで大きく差が出ます。良い味を作るには、良い乾燥材料を見つけることが大切です。


乾燥した食品材料の品質は、口に入れてよく噛んでみると、簡単に判別できます。生の食材を識別するには、ある程度の勘も必要とされますが、乾燥品の選別はしやすいのです。


なお、乾燥品であることは、保存性があるようで、それほど長くは保存できないことです。


乾燥品は、気温の高いときには、特に成分が変化しやすいので注意が必要です。乾燥しているために空気の影響を受けやすく、その結果、脂肪などの成分が酸化して、特有のひなた臭さを生じることになりやすいからです。この変化は温度が高いほど起こりやすいので、保存は、空気を遮断できるような容器、包装にして、低温の場所に置くことが必要です。