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ゴマの魅力は香りとテクスチャー!

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photo by tannazie

ゴマの魅力は香り

「ごまかす」という言葉は食材の「ゴマ」が言葉の由来になっています。「ごまかす」という言葉があるように、食べ物の味に変化を与える大きな効用を持っています。つまり、ゴマを料理に上手に使いこなすことで、味を向上させる力があるということです。


近年、様々な食材の味が低下している傾向になる中で、それをカバーするためにも、ゴマをうまく使いこなすことは非常に大切で、食材の中でゴマの力が強くなってきています。


ゴマの一番の魅力は、なんといってもその特有の香りにあります。この香りはゴマを炒ったときに生ずるもので、とくにゴマの皮から香りが出てきます。この香りの正体は、“ピラジン”と呼ばれる成分です。


ピラジンは水分の少ない状態で、タンパク質と糖分を180度くらいの高温で加熱すると生成されます。ピラジンを得るためには180度の温度と、ゴマの皮の部分が必要なわけです。


皮をむいたゴマには、ピラジンの働きがないが、それでも180℃程度に加熱すると、皮付きのときよりも穏やかながら、やはり良い香りが出てくる性質があります。これはゴマの中に含まれる脂肪が出てくる香りです。


ゴマの油からは、大豆やコーン、綿実、紅花(サフラワー)、ひまわりの油などとは違う香りが加熱によって生じます。この香りは、ラードやバターなどを加熱したときの香りとも異なります。

脂肪酸の種類によって植物油の香りは異なる

ゴマの油を加熱すると出る香りには脂肪酸によるものです。脂肪酸にはいろいろな種類がありますが、ゴマ油に多く含まれている脂肪酸は、“オレイン酸”と呼ばれる不飽和脂肪酸の一種で、不飽和の部分を一カ所だけ持っている菜種油に比較的に多く含まれています。


普通、植物油には、リノール酸呼ばれます。不飽和の部分が二個ある多価不飽和脂肪酸が含まれていること多いのです。オレイン酸かリノール酸かという違いが、180℃くらいに加熱したときに出る香りの差となっているのです。油は加熱することで、それぞれの油ごとに特有の香りが出てくるが、その香りの差異は、構成している脂肪酸の種類によって、それぞれの油に特有のものです。


ゴマ油のように、オレイン酸が多い油の香りは、穏やかだが、食欲をそそる、あっさりした香りです。オリーブ油を加熱したときに出る香りと似ていますが、やはり、ゴマには特有の香りがあります。大豆やコーンのような強い香りではありません。


このように、ピラジンの働きと、加熱した時の油からの香りが、ゴマの魅力となり料理の風味を引き立ててくれます。したがって、ゴマを料理に使うときは、必ず、炒るなど加熱してから使用することが必要なのです。


ただし、製品としてのゴマ油は、ゴマそのものの油と比べると少々香りが異なりますが、ゴマ油はゴマの中の油分だけを搾って分離してあるからです。ゴマの種実の場合は、皮も付いているし、タンパク質や炭水化物とともに含まれています。これらも加熱で香りを出すから、油単独の香りとは異なってきます。


ゴマ油には、白絞油と、香りを出すために炒ってから搾った褐色のものがあります。褐色のゴマ油は、炒ったときの香りが付いていますが、保存している間にかなり香りに変化が生じるので、炒りたてのゴマの種実の香りとは大きく異なります。したがって、料理の風味向上のためには、炒りたてのゴマを使うのがベターです。

洋風の料理にもよく合う

ゴマは日本の食材といった印象が強いですが、決して日本特有のものではありません。古代から世界各国で料理に用いられてきました。


古代エジプト王朝では、健康のためにゴマ油を飲んでいたと言われるし、中国では、他人は“ゴマ油”を食べるので不老長寿であったと言われています。また、アラビアンナイトに出てくる盗賊の呪文が“オープン・セサミ(開け、ゴマ!)”です。これは、ゴマの持つ素晴らしい効用が魔力の象徴のように考えられていたものの表れです。


ゴマは洋風の料理にとっても、決して異質なものではありません。良い風味を出すためには、ゴマを洋風の料理にも積極的に取り入れていくといいでしょう。

例えば、ゴマのっ風味のソースがあっても良いわですし、ゴマの入った調味液でマリネするのも良いです。

肉などを焼くときにも、コショウとともにゴマの粗くすったものを振れば、加熱したときに良い香りをプラスすることもできます。また、和え物に使うときは、ゴマの風味だけでなく、すり加減を工夫することで、舌触り(テクスチャー)に変化を持たせることもできます。


ゴマは、料理における幅広い風味向上の材料として、工夫次第で、いくらでも応用が可能な食材なのです。

ゴマはすり方の工夫で口当たりに変化を出す

ゴマをすって使用する場合、すり加減によって粒度が異なるものとなります。当然ながら粒度は、口当たりに大きく影響します。細かくすれば滑らかになりますし、粗くすればざらざらした口当たりになります。


また、ごく細かくすれば、ゴマ豆腐に使用する練りゴマ(ペースト)のように、非常に滑らかな感じとなり、口に入れたときにまず滑らかさを強く感じ、ゴマの風味は、後でおもむろに感じるといった状態になります。


ソースに加える場合でも、すり具合によって口当たりや風味が大きく左右されるので、独自のすり具合を発見することで、他にない料理ができるということになります。

ゴマの脂肪は酸化しにくい

ゴマの特色として、ゴマに含まれる油は酸化の度合いが非常に弱いということが挙げられます。これは、ゴマには、“セサミノール”という天然の酸化防止剤が含まれているからです。

セサミノールはかなり強力な酸化防止作用を持っています。このため、ゴマを使った料理は、時間が経過しても、風味に変化が起こりにくいという利点があります。


ゴマ油は、他の油よりも、賞味期限が長く設定されているが、これもこの天然の酸化防止剤のおかげです。例えば、一晩マリネしておく場合、どうしてもサラダ油などは時間とともに酸化して、風味の低下が起こりやすいのです。


しかし、ここにゴマをすって加えれば、一晩おいても、マリネした調味液に変化が少なく、風味の低下がかなり防止できます。



ゴマの種類と生産地

ゴマは色の違いで白ゴマ、黒ゴマ、金ゴマなどに種類分けすることができます。普通、もっとも多く使われているのは白ゴマですが、赤飯などのように、日本の祝いの席での料理では黒ゴマが使われていることが多いのです。


また、幕の内や握り飯も黒ゴマが普通です。これは、色のコントラストということもありますが、黒豆などのように、黒が縁起いいという信仰から出たものです。別に白ゴマでも黒ゴマでも風味にはそれほどの差はありません。


ところで、これほど風味に対して強力な効用を持つゴマでありますが、残念なことに、日本ではほとんど生産されていません。つまり、大部分は輸入によるものです。


ゴマの輸入先は、中国、東南アジア、アフリカなどの世界各国で、その時によって、どういう風味のゴマが入手できるか、安全性のないのが問題点です。


当然ですが、生産地により風味に差異があるからです。といって、どこで生産されたゴマなのか判別するのも難しいのです。量的には少ないですが、国産のものは、穂実が太っているし、風味そのものも良いようです。風味の良い国産のゴマの入手ルートを上手く作り、料理に用いるようにすれば、料理の風味も良くなることは間違いありません。


国産のゴマは、生産量が少ないため、生産量が少ないため、どうしても輸入物に比べて高価であります。その点は料理のコストに響くことになるわけですが、料理の風味の向上ということを考えれば、ある程度コスト面は容認する必要があります。料理の風味をより良くするためには、これは有益な投資ではないかと思われます。