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Love Lab Kitchen

~料理に少しのサイエンスを、キッチンにクリエイティブを〜

キャベツの魅力は噛むことで生まれる甘味

食材の話 食材の話-野菜の話

http://www.flickr.com/photos/8269641@N03/1423100601
photo by Yongjiet

キャベツの魅力はテクスチャーにある

キャベツは、幅広い料理に活用できる便利な野菜の一つです。キャベツが多くの人に魅力的と感じられているのは、特有の口当たりと、甘味、風味にあるようです。


料理の味わいの中で、大きな位置を占める要素の一つに口当たりがあります。この口当たりが食材の“テクスチャー”の影響を与えることが多いのです。


テクスチャーとは、弾力、滑らかさ、砕けやすさ、切断時の抵抗、粘性、かたさなど各種のものがありますが、歯や口膣内の粘膜に与える刺激を総合して表現されるものです。テクスチャーは、食べ物のおいしさに対して、非常に大きな影響を与えます。


テクスチャーは、ギリシャ語で“織り成す”という意味を持っています。布の織り方によって生地の肌触りが異なるように、食材の口当たりもこれと相通じるものがあります。


キャベツの場合を考えて見ると、切り方によって、テクスチャーに大きな差が出ます。例えば、串揚げに添えられるキャベツは大きめの色がみぎりのキャベツと、トンカツに添えられる千切りキャベツとでは、同じキャベツなのに味や感触がまったく違って感じられます。同じ千切りキャベツであっても、細さの度合いによっても感触が異なってきます。キャベツはごく細く切れば固い感じが残り、太く切ればしなやかな感じになります。


このように、キャベツは切り方によってテクスチャーに差が出るので、料理によって意識的に使い分けをすれば、それぞれ特注のおいしさを味わってもらうことができます。その結果、全く同じ料理でもあっても、添え物のキャベツの切り方一つで、一皿の印象が異なることになるし、そこが調理人の腕の発揮できる場でもあります。

テクスチャーは鮮度に左右される

テクスチャーは、野菜の場合、鮮度との関係が非常に深い関係にあります。鮮度のいいものほど、テクスチャーが味へ与える影響はよくなりますが、これはY歳の繊維の破断性と大きく依存します。


キャベツをはじめ、野菜類の破断性は、弾力が少ない方が良い状態であると言えます。つまり、組織がもろい状態の方が、破断性は良いといことになります。このような状態であると、キャベツの歯ざわりが良いと感じられます。


野菜の破断性が良い状態であるためには、“新鮮”であるという条件が必須とされます。新鮮なキャベツの細胞の中は、一杯の水分がはちきれんばかりに含まれている状態なので、少しの衝撃で破断されてしまいます。

これが、さっくりとした歯触りになるのです。ところが、どんなに新鮮なキャベツであっても、新鮮さだけでは破断性がよくなりません。“冷却”という条件も加味する必要があります。


キャベツの温度が高いと、細胞を伸びた状態になります。その結果、細胞の中の水分は、はちきれる状態ではなくなり、細胞内には余裕がある感じとなります。このような場合、噛むという衝撃が加わっても、ただちに破断されるのではなく、かなりの力がかからないと、細胞は破断されません。口当たりとしては、さっくりとせず、しんなりした状態になります。これではテクスチャーが良いとは感じされません。


テクスチャーの良いキャベツであるためには、キャベツが新鮮であると同時に温度が低いということが必要なのです。


切ったキャベツを冷水に浸してパリッとさせるが、これも調理科学的に見ても意味があるわけです。その場合、ただの水よりは、氷水のようにキャベツが良く冷やされる方がいいのです。これは短冊に切った時も、千切りにした場合も同じですが、特に千切りの場合は味覚により影響するところが大きいので、より鮮度と冷たさが要求されます。

キャベツの味の特徴は甘味にある

キャベツの味の魅力は“甘味”にあります。この甘味はブドウ糖と含硫化合物によるものです。

ブドウ糖は、キャベツにかなり多く含まれていますが、収穫した後、時間とともに減少していきます。それは収穫した後でも、キャベツが生きており、呼吸作用を行うからです。呼吸を行うときに、その時にブドウ糖が消費されてしまうのです。呼吸作用では、ブドウ糖が分解され、二酸化炭素と水になりますが、このときのエネルギーがキャベツの生命を維持しています。


したがって、呼吸作用が長く行われるほど、キャベツの中のブドウ糖は減少していき、甘味も減っていくことになります。キャベツが新鮮なほど味が良いのは、含まれているブドウ糖が多いからです。


保存中にブドウ糖が減少することは避けられないのですが、できるだけ減少を少なくしようとすれば、温度を低く保つことが必要です。それと同時に呼吸作用を抑えるようにすれば、ブドウ糖の消費は少なくて済みます。


そこで、保存の際は低温であり、しかも酸素の少ない環境に置くことが大切です。

キャベツの生産地での保存は、この条件を満たすため、温度コントロールで低温状態を保ち、酸素の少ない空気を倉庫に入れて管理しています。これをCA(Controlled
Atmosphere)貯蔵と呼んでいます。


消費者の手に渡ってからも同じような条件下におけば、鮮度を保つことができます。低温状態に置くためには、冷蔵庫にいれればよいですし、その際に少しだけ穴の開けたポリ袋に入れることで鮮度を維持することができます。完全に密閉してしまったポリ袋に入れてしまったのでは、キャベツが完全に呼吸できなくなってしまい腐敗してしまうからです。


しかし、長い時間貯蔵されたキャベツを使うよりはやはり新鮮なものを求めるようにする方が良いということの方が言うまでもありません。

キャベツは火を通すことで甘味が増す

キャベツは生のままでもブドウ糖による甘味がかなり強いのですが、加熱することでさらに強い甘味が生じます。これはキャベツに含まれる含硫化合物による影響です。


含硫化合物は、キャベツ特有の臭いの成分であり、生のときに少し感じる辛味の成分です。この含硫化合物は、加熱することで甘味の強い物質に変化するためキャベツは甘くなるのです。


キャベツをはじめとするアブラナ科の野菜には、硫黄を含んだ辛味のある物質があり、これらは加熱により強い甘味に変化する性質を持っています。大根を加熱すると甘味を生じますが、これも同じ系統の物質によるものです。



キャベツは幅広く使いこなせる野菜

キャベツが世界の料理に広く使われている理由として、加熱による味の魅力と、生の状態での歯切れの良いテクスチャーの魅力といったものが挙げられます。


キャベツは油との相性も良いから、炒め物にしてもおいしいし、茹でてからマヨネーズ和えることもできます。また、茹でた後、ドレッシングで和えてサラダや、ホットドッグの具にしもよい。脂肪の多いベーコンのようなものと炒めて相性が良いです。


さらに、酢との相性も良いから、酢漬けにしてもよく、カレーライスとの添え物などに良いピクルスになります。

キャベツが酸味と合うということは、キャベツを塩漬けにして乳酸発酵させたサワークラウトとも言えます。サワークラウトは、ドイツをはじめ、ヨーロッパで用いられる漬物の一種ですが、このサワークラウトの酸味も油と合うので、ソーセージのように脂肪の多い肉の加工品などと、ともに炒めるなどとすれば、風味の良い料理ができます。


キャベツは、生のままでも食べて美味しく、加熱しても味がよく、しかも和風、洋風、中華風、と幅広い料理にあう食材なので、工夫次第で応用できる料理は五万とあるといっても過言ではありません。